どうも!2018年はゴーヤの屋上栽培に進出しているカタオカ(@peterminced)です。
昨年2017年は応援しているシャープの株主総会に足を運んできたのですが、今年は視野を広げるべく同業他社や関連産業の総会にも足を運んでいます。
その一環として、よく比較対象として出されるジャパンディスプレイ(JDI)の株主総会に6/19(火)行ってまいりましたので、その様子をレポートします!
目次
会場は渋谷のヒカリエホール
新橋に本社を構えるジャパンディスプレイ(JDI)の株主総会会場は意外にも渋谷のヒカリエホール。
渋谷ってIT企業が株主総会やってるイメージなのですが、製造業というのが意外ですね。
総会会場選びから垣間見えるコスト意識
ところでこのヒカリエホール、使用料金がめちゃくちゃ高い。
総会が開かれたHALL(A) の料金は下記の通り。
- 基本料金(本番日):¥1,900,000(10:00~22:00)
- 基本料金(準備・撤去日):¥1,140,000(10:00~22:00)
(出典:ヒカリエHP)
前日から準備していることを勘案すると、200万円はかかっているでしょう。
ちなみにJDIの本社がある新橋付近には、550人も収容できるヤクルトホールがあり、終日34万円で借りれます。
ジャパンディスプレイ(JDI)は4期連続赤字の会社。少しでもコスト削減しようと努力しているなら、前年の慣例に従ってヒカリエホールを使い続けるなんて思考停止な判断はしないはず。
死の淵から復活したシャープの場合、例年オリックス劇場(平日終日110万円)で開催していた株主総会は、鴻海傘下になって以降、本社堺工場内の大ホールに変更しコストを抑えています。
このように株主総会が始まる前からジャパンディスプレイ(JDI)のコスト意識の低さが垣間見れてしまいました・・・。ハァ・・・大丈夫かな・・・
明日は久々の株主総会か。
シャープのライバル、ジャパンディスプレイ。ずーっと赤字なのに会場が変わらず渋谷ヒカリエってのはどうなんだろ。。。
— ベランダゴーヤ研究所@カタオカ (@peterminced) 2018年6月18日
原価割れして粗利も出ない状況
4期連続赤字のジャパンディスプレイ。直近の決算は売上7,175億円に対し、なんと2,472億円もの赤字!(売上高対 -34%)
大赤字の要因は構造改革費用とのことですが、損益計算書の内訳をみると、売上原価を差し引いている段階で既に赤字。
つまり原価割れしているのです。
この状態だと売れば売るほど赤字幅が増えるという地獄のスパイラル。
元シャープの方が書かれた分析本「シャープ「企業敗戦」の深層」によると、ジャパンディスプレイ(JDI)がシャープから大口顧客の小米(シャオミ)を奪った際、ありえない安値(業界では大塚価格とも)で攻勢をかけた旨が書かれています。インセル方式という高い技術製品であるにも関わらず!
この安売り体質を根本的に変えなければ再建は成し得ないでしょう。
大株主:産業革新機構
ジャパンディスプレイ(JDI)を実質支配しているのは、経済産業省が主導する官製ファンドの産業革新機構。
私はこの産業革新機構こそがジャパンディスプレイ(JDI)の足かせであると考えています。
実際、ジャパンディスプレイ(JDI)にスピード感を感じられないのは、重要な案件について都度産業革新機構の決済が必要だから。
文藝春秋2017年10月号でも「産業革新機構がJDIを壊滅させた」というタイトルの記事が出ていました。
中国のスマホメーカーからの注文が激減し、茂原と東浦の減損処理に踏み切った時も、経産省から『アベノミクスの失敗のように見える施策は困る』と圧力がかかった
また私自身も過去の社会人経験から産業革新機構に対して良いイメージは持っていません。
といいいますのも前職、産業革新機構が絡んだ経営統合(日産フォークリフトとTCM)を競合他社として目の当たりにしたことがあるんですが、もうグッチャグチャ!
1+1=2 以上になるはずが
1+1=1.2 と却って縮小する事態に。
あぁ、官製ファンドって全然ビジネスのこと分かってない人たちが理想像を描くだけ描いて丸投げする組織なんだとその時感じました。
元東電会長が取締役
あと気になったのが取締役に下河邉和彦氏が名を連ねていたこと。
下河邉氏といえば、東日本大震災後の東京電力において取締役会長を務めた人物。
なぜジャパンディスプレイ(JDI)に参画しているのか謎です。
ちなみに保有株数は0株。コミットメント量不明。
株主からの質問
では恒例の株主からの質問コーナー。主要なものをご紹介します。
安売りしてないか?もっと高く売ってくれ!
大赤字の主要因は生産設備の過剰状態を解消するための構造改革費用である。
また今年に入ってフルアクティブ(4辺狭額縁の液晶)が順調に拡販できている。
去年は稼働率低かった白山工場も今年はフル生産体制である。
ただせっかくフル稼働して生産した商品も、安売りしてしまっては元も子もありません・・・。
取引先と信頼関係を築いていると言われてますが、その前提が「安いから」ということであれば、それは本当の信頼関係でないと思います。
有機ELの見通しについて
現在の状況について教えてほしい。
技術水準は急激に追い上げており、性能面では追いついている。
あとは製造技術の仕上げ段階である。
総会会場では実際に有機ELが展示されていました。非常に高精細でキレイ。
たしかに技術水準は期待できそうだなと思いました。
ただせっかく作り出した製品も安売りしてしまっては元も子もないので、販売戦略はきちんと立てていただきたいですね。
取締役の持ち株数について。熱意が感じられない!
ここにいる株主のほとんどが損をしている。
取締役陣の持株数をみると2人しか保有していない。
これじゃあ株主の気持ちなんて分かるわけない。
そして事業に対する熱意も感じられない!
インサイダーの関係で取締役は気軽に株を買えない。
株は持っていないが全員真剣に取り組んでいる。
これは鋭い指摘。やはり身銭を切らないと真剣さって沸かないと思うんです。
実際議場に並んだ取締役陣を眺めてみたのですが、みんなどこか他人事のような表情だったんですよね。
あと全体的に平均年齢が高い。
当事者意識持っている人はどれほどいるのか?私は正直分かりませんでした。
前年度の目標が達成されるところを見たことがない
これまで3回ほど株主総会に参加したが、毎年同じような光景を見る。
それは前年度の目標が達成されずに悲観的な内容が報告されること。
今年も同じかなと思っている。
スマホ市場は思わしくないが、車載ディスプレイ市場においては堅調に拡大している。
ソニーやASUSにも供給が進んでいる。
痛みが伴う構造改革も実施し、損益分岐点も下げて利益が出やすい体制にも変えた。
なんとしても来季黒字化を達成する。
この質問に対しては東入来社長が相応の時間をかけて自分の言葉で熱弁されていたのが印象的でした。
経営陣の中で一番当事者意識が高いのは東入来社長なのかな。
大株主などのしがらみがなければ、大胆な施策を打ち出せるのかも・・・
組織内で派閥争いはないのか?
我が社は6社が統合してできた会社である。
銀行でもそうだが、複数の会社が経営統合すると派閥争いが発生しやすい。
そういうものはあるのか?
社内に派閥争いは全く無い!
社外取締役曰く、
強いて言えばお互い敬意を持ちすぎて遠慮しているとのことである。
全く無いというのは言い切りすぎかなと思いました笑。
こういう質問には変に取り繕わない方いいです。
なぜ印刷式だけでなく蒸着方式も進めているのか?
我が社の有機EL 最大の特徴は他社にない低コストの印刷方式である。
にもかかわらず韓国メーカーと同じ蒸着方式の有機ELも開発するのはなぜか?
- 印刷方式は大型ディスプレイ向け
- 蒸着方式は小型高精細向け
とそれぞれ最適な利用用途がある。
ただ印刷式にしても蒸着式にしてもバックプレーン(基盤)部分は共通であり、我が社の技術の見せ所。
ちなみに印刷式は関連会社のJOREDが製造するが、つくったものはすべてジャパンディスプレイ(JDI)が販売する。
私は印刷方式のノウハウをもつJOLEDはいずれ他社に事業売却するのかなと思っていたのですが、ジャパンディスプレイと協業を深めていく方針のようです。
うーんホントかな?
カタオカも質問してみた
私も2問ほど質問させて頂きました。
①異色の執行役員 伊藤嘉明氏の動向について
昨年秋ごろ、外部からユニークな経歴を持った伊藤嘉明氏を招聘されていた。
外からは具体的な動きが見えないが、現在どのようなことをしているのか?
伊藤氏にはマーケティングとともにコミュニケーション部分を任せている。
具体的にはJDIのイメージ確立のためにメディアの顔になってもらっている。
総会会場に併設している製品展示スペースも彼が監修している。
本来なら本日直接本人より喋ってもらいたかったが、今朝急遽喉を痛めてしまったようで本総会は欠席している。
彼が入社してまもなく1年になるが、今年の8月にはメディア向けに1つの成果を発表予定なので待ってほしい。
ジャパンディスプレイに今必要なのは非連続的な改革であり、それを実現するためにはこれまでとは違った人材が必要です。
そういう意味で伊藤嘉明の存在は個人的に興味深いのですが8月の発表を楽しみに待ちたいと思います。
ただプロ経営者なら年に1回の総会なんだから体調管理はしてくれよと思いました。
②シャープをはじめとした他社との協業について
昨年11月ごろ中国メーカーとの提携・出資・協業に関するニュースが出た。
あれから半年経過するが未だに具体的な進展がない。
一方同じ国内メーカーであるシャープからは2年前から再三オールジャパンで協業することの提案を受けている。
我が社の業績状況を鑑みると良い関係が築けそうだがどのように考えているのか?
アライアンス担当の福井が回答させて頂きます。
現在シャープさん・中国企業さん含めていろんなところとコミュニケーションを取っている。
協業を進める上で我が社に十分なメリットがあるかを慎重に検討している。
本年度中には具体的に発表予定である。
(※福井氏画像出典はNHKクローズアップ現代)
シャープとは既にコミュニケーションを取っているんですね。シャープ株主としては嬉しい限り。
ちなみに福井功常務は現場肌で工場の歩留まりを大きく改善させた実績を持つ方。その手腕が期待されます。
【参考】ジャパンディスプレイを再生した鬼
シャープとの協業を検討した場合おそらく一番ネックになるのは国内生産拠点の重複でしょう。シャープも国内に液晶パネル工場を有していますからね。
個人的には、中国メーカーの傘下に入り、実質チャイナディスプレイになるよりも、オールジャパンで切り開く方針がロマンがあるなと思います。
【参考】ジャパンディスプレイ(JDI)とシャープが業務提携する6つの理由
ただ発表予定が本年度中ってちょっと遅すぎやしませんかね。つまり来年の3月末まで。その時運転資金は果たして残っているのか・・・??
併設の製品展示会場を見てみた
総会終了後、ジャパンディスプレイの製品展示を見てみました。
正直総会中は沈みゆくコスト意識が低い会社、とジャパンディスプレイ(JDI)に対し悲観的なイメージを抱いていたのですが、展示製品をみてみると、いやはやなかなか高水準。
- 高精細な有機ELパネル
- 1,001ppiを誇る超高画質VRゴーグル
- 視認性抜群の車載液晶ディスプレイ
- 低コストでセキュリティ性の高い指紋センサー
(出典:ジャパンディスプレイHP)
また内部事情に少し詳しい友人によると、工場メンバーの士気は意外と高いらしい。
うーん、ということはシャープ同様マネジメント・経営管理が抜本的に変われば、大きく復活する可能性もある気がしてきました。
個人的には産業革新機構の傘下から脱したときが大きな潮目になると予想します。
まとめ
- 万年赤字
- 安売りしすぎ
- 達成されない経営計画
- 意思決定のスピード遅すぎ
と正直ネガティブ要素しか抱いてなかったジャパンディスプレイですが
- 株主構成の変化
- マネジメントの一新
- セールス機能の強化
が実現すれば、保有する技術や生産設備は潤沢なことから復活するような気がしました。
問題はそれがいつ起こるのか?ジャパンディスプレイに残された時間はもう長くはありません。
今日の一句
”持っている 技術はいいよ JDI”
【参考】
シャープの分析本ですが、ジャパンディスプレイ(JDI)の安売り攻勢等裏事情も事細かに描かれており、企業理解を大きく助ける良書です。
今季の損益計算書をみると原価割れ。
安売りして従業員を食わせている状態は製造業として最悪。
パネルを安売りしてないか?頼むからもっと高く売ってくれ。