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空き家のマーケティングを本格的に進めていこう
2017年初頭は空き家のマッチングシステムを作ったりと、空き家に注力していたのですが、下半期以降いろんなお仕事の引き合いが増え始めてなかなか空き家について考えることから遠ざかってしまっていました。
うーん、このままだとフェードアウトしてしまう!という危機感を感じ、本格的にマーケティング活動を開始しようと思い立つ!
上場企業の社長に直接聞いてみよう!
その手段として思いついたのが、趣味でよく行く株主総会。
上場している不動産会社の社長に、株主総会の場で直接空き家問題についての考え方を質問すれば、マーケットの全体イメージがつかめるんじゃなかろうかと!
ちゅうわけで不動産上場企業の決算期に合わせて株をちょこちょこ買い集めてみました。
本記事では総会で質問した様子をシリーズ化してレポします!
【3228】三栄建築設計の場合
2017-11-28 中野サンプラザで開催された株主総会に行ってみました。
棒読みの事業報告
開始前の会場の様子はこんな感じ。参加者はまばら。社員株主らしき方が何人かいます。
ちなみに事業報告は冊子の内容の棒読みでイマイチでした。。。
配布資料をそのまま朗読してるだけの株主総会ほどつまらないものはない、、、
— ベランダゴーヤ研究所@勝手にシャープ大使 (@peterminced) 2017年11月28日
コンセプトは「同じ家は、つくらない」
三栄建築設計は「同じ家は、つくらない」という方針のもと住宅を生産販売する企業。
実際、三栄建築設計が手掛けた事例を見ると、1つ1つ家の意匠が異なっておりデザイン性が高いことが伺えます。
(出典:三栄建築設計HP)
絶好調すぎる業績
気になる業績ですが、景気が良い外部環境も追い風になってなんと4年で売上高が2倍に!スゴー!
空き家問題に対する捉え方
そんな絶好調企業に、質疑応答コーナーで小池信三社長に聞いてみました。
Q:
わが社は業績いたって好調である。一方で現実問題として空き家が増えており社会問題化している。
景況が悪くなった際、家が売れなくなって気がついたら空き家だらけといった事態にならないか?
わが社の考え方を聞きたい。
A:小池信三 社長
空き家が発生する要因は2つあると考えている。
(1)相続で引き継いだが早く売却したいものの売却条件が合わない
(2)思い入れのある家を手放すのがイヤ
(1)の人が増えることに関しては、わが社にとっては供給量が増えるのでチャンスである。
てな感じ。
(2)の方が圧倒的多数だから市場に出回らないと思うんだけどなぁ・・・
所感
三栄建築設計はけっこう楽観的だなーと思いました笑。
他の株主の方が、2020年のオリンピック以降景気が弱まる予測について質問されていましたが、
小池社長の回答は
「景気が悪化しても給与が大きく下がるわけではないし、人が家を買いたい気持ちは大きく減らない」
つまり空き家問題は住宅供給メーカーにとってあまり本腰を入れる話じゃないみたい。
他の不動産会社はどのように考えているんでしょうかね?
【2120】LIFULL(ライフル)の場合
12/21(金)に開催された株主総会で質問してきました。
空き家情報の開拓進捗と今度の展開ついて
掲載されている物件をすべて合算しても6,000件とご指摘のように少なすぎる。
そこで当社はHOMESで培った不動産登録のプラットフォームを自治体に無償で使って頂き一覧性を高くしてもらおうとしている。
現在約300の自治体から応募が来ている。
また、福井県鯖江市と提携した。他県にもこの流れを進めていく。
空き家は人の想いが入っている物件である。
CMを打って大々的にプロモーションするよりも、顔なじみの自治体の職員の方が相談に乗るような人に寄り添う形が良いと思う。
地道な開拓で長期戦になるが社会的に意義のあることなので進めていきたい。
所感
事業内容の一環としてしっかり取り組んでいく姿勢を感じました。
そして何よりも、目先の収益だけを追うのではなく中長期的に社会問題を解決していこうとする気概に共感。
LIFULL(ライフル)については思い入れが深まったので別途個別に詳細記事を書きました。
【8889】アパマンショップの場合
12/22(金)に開催された株主総会に行ってきました。
今現在全国には820万戸の空き家がある。同業他社のLIFULL(ライフル)さんは国土交通省と協力して空き家を民泊の受け皿にしようと動いている。
我が社は全国に約1,100店舗のネットワークを抱え、知名度もあり相談されやすい環境にあると考える。
何か具体的に取り組んでいることはあるか?
A:大村浩次 社長
アパマンショップでは1,700万件の物件データを管理しており空き家問題については当然認識している。
会社としても8年前から取り組んでいる。
また一般社団法人全国空き家バンク推進機構理事長 樋渡 啓祐 氏(佐賀県武雄市の前市長 ツタヤ図書館作った人で有名) ともつながりがあり参画している。
最近の傾向としては1戸建ての空き家が増加してきており、隣部屋の騒音が気にならないことから民泊にも最適と考えている。
近々一軒家のみを扱ったサイトをOPENする予定である。
所感
1,700万室もの物件データはすごいですね。企業としても取り組みはしている模様。
ただ気になったのは他の株主の方の質問で、やたらサブリース物件に関するトラブル内容が多かったこと。
総会全体的に怒号が多く行き交い、なんか重苦しい雰囲気でした。うーん闇が深そう・・・。
▲参考までに株主総会のおみやげ
【3248】アールエイジの場合
2018-01-24 日本橋にて開催された株主総会に行ってきました。
出席者数は約50名くらい。
アールエイジは中小規模のマンションを開発販売・賃貸管理(サブリース)する会社。
特徴は、都心の駅から徒歩5分圏内注力していること。不動産業界のビックカメラといったイメージでしょうか。
HPを見るとどれもオシャレな物件。
(出典:アールエイジ公式HP)
大規模なマンションを主力に扱わない理由としては、中小規模だと物件価格が安く(2億~3億)、個人客まで裾野が広がるため流動性を確保しやすいというメリットがあるそうです。
一方1部屋あたりの建築コストが大規模マンションと比較すると高くなるのがデメリット。なので家賃相場の高いアクセスが良い場所に注力しているわけですね。
都心駅チカ物件に空き家はあるのか?
HPのオシャンティーな雰囲気見る限り空き家とは無縁そうですが、ひとまず質問してみました。
空き家が社会問題になっており、内訳を見ると賃貸空き家率も上昇している。また都心であっても豊島区のように空き家率が全国平均を上回っている場所もある。
我が社はサブリース(一括借上)が主力事業である。賃貸収入が減ると事業リスクが高まるわけであるが、対策は考えているのか?
当社の扱う物件は都内や千葉に存在している。取扱い物件の中には主要駅ではなく、駅から徒歩20分かかる物件もあるが確かに稼働率は下がっている。
ただ主力である駅から徒歩5分以内の物件に関しては稼働率の低下はない。
この駅近5分以内の物件に注力する基本方針をこれまで通り堅持していく。
所感
対象マーケットが駅チカに注力していることもあってか、空き家問題とは無縁そうでした。
【参考】アールエイジの取扱室数は全部で約5,000室。うち約1,800がサブリース。さらにその約8割が単身者向けとのこと。家賃滞納率は1%(低い方らしい)
ちなみに業績自体は横ばい状態。他の株主に対する社長の受け答えを見ても野心的な中期事業拡大計画はなさそう。民泊計画もなし。
物件売却益よりも賃貸収入を基本としてストック収入を地道に増やし穏やかな成長を目指していくようです。
ちなみに向井山社長は一級建築士であり現場にもよく出ているそうです。その点は安心ですが、受け答えから現状維持姿勢が強いように思いました。
総会の進行も棒読みだったし・・・・。
なので急成長による値上がり目的で保有するのは期待はずれかな。しかし、安定した賃貸収入基盤があるため、配当目的で保有する分には良いでしょう。
▲お土産はすごく高級そうな梅干し?でした(梅一番井口)
【1873】日本ハウスホールディングスの場合
2018-1-25、桧の住宅にこだわる日本ハウスホールディングスの株主総会に行ってきました。
東京本社の不動産会社の株を買ったのですが、株主総会の場所がなぜか宇都宮。
なぜ!! pic.twitter.com/EpOesStRLL— ベランダゴーヤ研究所の人 (@peterminced) 2018年1月10日
東京本社だから東京でやるのかと思いきや、招集通知をみると開催地は宇都宮。まじかよ!ちょっと遠いけどせっかくゲットしたチャンス。いつもよりかなり早起きして行ってみることにしました。
宇都宮駅から株主送迎バスに乗り込みたどり着いたのは超豪華なホテル「ホテル東日本宇都宮」。
調度品のクオリティが高すぎる!後から地元の方に聞いた話では、宇都宮でも3本の指に入る名門ホテルだそうです。納得。
ちなみにこの「ホテル東日本宇都宮」は日本ハウスホールディングスの所有物件。宇都宮を含めて6軒も!
住宅以外にホテル事業も運営してるんですねー。
質問してみた
我が国では全国820万戸もの空き家がある。2020年オリンピックまでは景況は維持されると考えるが、その後は減速段階に入り、気がついたら家が余っているという状態なる。
我が社の主力事業は住宅の建設であり、外部環境の変化は大きなリスクである。何か対策は考えられているか?
中古住宅を仕入れてリフォームし販売することを営業所判断で実行できるよう許可している。が残念ながら販売実績が少なく進展していない。
また都心は相続が絡むので難しい。具体的には地価が高いため親族同士で揉める。正直進捗が弱い。申し訳ない。
なので次回までの宿題とさせて頂きたい。
所感
地方では新築信仰が強いため売れないのでしょうか?それとも会社が扱うにあたって採算が合わないのか。
また、都心では土地の資産価値が高いことが空き家の流動性を阻んでいるんですね。そう考えると持ち家が一般的でなかった時代は相続でもめることも少ないから空き家問題もほとんどなかったのかなーなんて思いました。
総会後の超豪華な株主懇親会
株主総会の後はホテル内となりの会場で株主懇親会が行われました。これがまぁ度肝を抜く豪華さだったんですね。
同じテーブルになったいろんな株主総会に行かれてる方も「これほどの豪華さは初めて」と言わしめるほど。
▲なんとお酒も出ます笑
本日宇都宮開催の株主総会。(日本ハウスホールディングス1873)
懇親会が色々おかしい。株価は700円なので7万円あれば買えます。
懇親会は来年も開催するそう。配当利回りも高く株主優待付き。+ホテルで豪華食事がつくことを考えると宇都宮市民はマストバイな株な気がする・・・。 pic.twitter.com/45EP7mQatl
— ベランダゴーヤ研究所の人 (@peterminced) 2018年1月25日
ちなみに成田社長は、自社ホテルの方が株主を徹底的におもてなしできると考え、会場を宇都宮にしたそうです。なるほどそういう理由だったのか!
来年度も同様の懇親会を開催するそう。超太っ腹です。
ちなみに10単元以上持ってる株主には子会社である銀河高原ビールのビールが贈られますが、前年度に事業売却したため今後は別のものになるそうです。(東日本ホテル シェフ監修の食品)
【6064】アクトコールの場合
2018-2-26 住宅設備のトラブルに対して24時間駆けつけ対応するサービスを主軸とするアクトコールの株主総会に行ってきました。
不動産会社というよりは、その周辺サービスを提供してるのですが、その内容が実にきめ細かい。
(出典:アクトコールHP)
電気水道ガス、といったインフラ周りから安否確認までやってくれます。
AIからレストランまで。事業内容が幅広すぎ
でこのアクトコールなんですが、事業領域がワケワカメ。前述した駆けつけコールセンター以外にも最先端のAIからレストランまで超幅広くやってます。
しかもレストラン事業で運営している「パンとエスプレッソと」は表参道で超行列が並ぶ人気店。
一体何屋なんだ?カオスすぎる・・・!
木下藤吉郎みたいな平井社長
アクトコールの平井俊広社長は、大阪で一番上品な地域と言われる岸和田ご出身。カープの黒田と同じ上宮高校野球部に所属し龍谷大学進学後は商社へ。
その後一念発起し、体があればできる仕事を片っ端からやりまくり。そしてある日勢いで東京に上京し、あれこれ動き回っているうちにアクトコールを創業し上場。
その立身出世具合とキャラ風貌が完全に木下藤吉郎。
私も30社以上株主総会に行ってきましたが、これほどキャラが立ってる社長は初めてでした笑。トーク面白すぎ。
アクトコールの株主総会は社長の漫談だった。これは新しい形。大阪岸和田出身社長のサービス精神、事業拡大に活きるか?観察してみたい。
— ベランダゴーヤ研究所の人 (@peterminced) 2018年2月26日
空き家管理ビジネスへの進出は検討しているか?
駆けつけサービスを運営し、全国に1,600もの拠点があるアクトコールなら、空き家市場ともマッチすると思い質問してみました。
我が社は全国に1,600もの拠点がありインフラから安否確認まできめ細かいサービスを提供できる。
現在空き家が社会問題化しているが、都心に住んでいて地方の実家を管理できない人が増えている。
我が社が管理代行するサービスを立ち上げれば対応できるような気もするが、いかがか?
空き家はそのほとんどが価値がないものであるが、社会問題であり、困っている人がいる。
また、人口減少により新築が減るため、国も中古住宅の流通を促進させていきたいようだ。
当社は人に喜ばれる事業をやっていきたいので、空き家のの流通を促進できる事業を準備していきたいと考えている
所感
平井社長の人に喜ばれる面白いことをしたいという気持ちは株主総会や、その後の事業方針説明会からひしひしと感じました。今ストック収入があるうちに新規事業をどんどん展開していきたいと何度も口にされていたので、空き家関連事業について今後何らかのアクションをされるように思います。
ただそこで重要になってくるのが人材の確保。アクトコールの平均給与って上場企業の中でも低い水準。社員さんのクチコミみても、人間関係・風通しはいいけど待遇が限界だから退職するケースがよく散見されました。新規事業成功のカギは従業員の待遇改善による中長期的な推進力の維持かなと思います。
具体的な舵取りは、平井社長がバイトしてたときの後輩、菊井聡さん(大阪大学出身)の腕の見せ所ですね。
【3266】ファンドクリエーションの場合
2018-2-27 不動産の金融商品を組成するファンドクリエーションの株主総会に行ってきました。
これまで不動産そのものや管理サービスを行う会社に行ってきましたが、今回は毛色を変えて金融分野から攻めてみました。
空き家をテーマにしたファンドについて
不動産の市況は良好だが、2020年のオリンピック後は縮小する見方が強い。また、その時は我が国で家余りの状態がより顕在化されると思われる。
我が社の近くにある不動産企業、LIFULL(ライフル)はクラウドファンディングの会社を設立し空き家に投資するビジネススキームを構築中。
我が社のファンド組成ノウハウを活用すれば、空き家をテーマに商品開発する予定はあるか?
古民家や空き家をリノベーションし訪日外国人向け宿泊施設を運営する京都のAJインターナショナルに出資している。
インバウンド市場はオリンピック後も成長が期待され、地方にも波及すると考えている。京都に限らず地方観光都市にも展開し、ファンドを組成していきたい。
所感
ファンド会社は、お客様が損しないような商品を造成することが求められるため、扱う物件がきちんとしたものである必要があります。
田島社長も一時期シェアハウス向けファンドを検討したこともあったそうですが、設備が劣悪なところが多く、投資に値しないと判断されたそうです。
なので空き家に関してはよほどの堅い需要が見込まれないと、ファンド組成は難しいのかなと感じました。
富裕層の節税需要に応えるスキームが面白い
総会後は事業方針説明会だったのですが、これが知らなかった知識ばかりですごく勉強になりました。
例えば
- 築22年以上の木造家屋は4年償却が可能。1年あたりの償却額がデカイので節税になる。
- 取得から5年後に売買すると、売買益が税制面で優遇される。
- 米国は日本よりも湿度が低い気象条件のためか、木造築22年以上の物件でも状態が良い。
- 日本で築22年以上の木造家屋でそのまま使える物件は少ない。リノベしたとしても費用が莫大で、新築として解釈されてしまう。
ファンドって税制面の知識を駆使して創意工夫して作られていくんですね。
また、空き家への投資が富裕層の節税ニーズとうまくマッチングすると、面白いと思いました。
節税って「当初払う予定だったものが、払わなくて済む」という流れなので、心理的にも手を出しやすいですから。
築22年以上の木造住宅は4年償却できるらしく、富裕層の節税対策として人気のスキームらしい。
今日行ったファンド組成会社フツーに勉強になった!— ベランダゴーヤ研究所の人 (@peterminced) 2018年2月27日
いやはや普段全く行かない世界に接触するのって新たな知識補充になって楽しいです!
つづく
新たに総会に出席次第、追記して参ります。
つづく・・・
また、所有者は高齢の方が多くインターネットに触れる機会はほとんどない。
今後どのように空き家情報を開拓していくのか?
地道に開拓していくのか?それとも大々的にCMを打って認知度をあげていくのか??