家業であるカバン屋を承継するための修行第一弾、兵庫ミッション(第1部)が完了した。
Twitter・Youtube・ドローンいじりで夜ふかし&朝8:00起床というある種自堕落な生活ルーティーンは、兵庫ミッションの朝7:15~深夜24:00前後まで働きまくる生活により強制リセットされた。
ド繁忙期だから超忙しいよと予め言われていたが、正直想定を越える忙しさだった。スマホを見る余裕なんてまったくない。そして全身を襲う筋肉痛。カバン屋を承継すると頭は言っているが、肉体はやめとけというフィフティ・フィフティの狭間をなんとか渡り切れてひとまずホッとしている。
さてWEBマーケ、水耕栽培、マイクロドローンという全くの異業種から縫製業界のカバン分野に飛び込んだのだが、グーグル検索しても出てこない世界だらけで非常に新鮮であった。コロンブスも同じ気持ちだったのかもしれない。今回はそのことにフォーカスして書こうと思う。
目次
サイバー空間に存在しない世界
まず兵庫ミッションでお世話になったのは兵庫県但馬エリアにある、とる縫製会社さん。まずホームページが存在しない。さらにグーグルマップで調べても民家らしき建物しか表示されない。
はたしてこの縫製会社は本当に存在するのか?もしかして拉致監禁されてしまうのではないか?
検索すればたいていの情報は手に入る都市部の環境に慣れきった私は強烈な不安に襲われた。情報がないということがこんなにも心をザワザワさせるとは・・・
グーグルマップが通用しない世界
万が一の事態が起こった場合、自力で脱出することを想定してグーグルマップを開いてみた。
ダメだ、全然分かんねえ笑
かの明智光秀は丹波平定にかなり苦労したと聞いていたが、実際に来てみて彼の気持ちがよく分かった。そりゃ信長も絶賛するわ。
たしかにそこには人と機械の営みがあった
やはり山間部に軟禁されてしまうのか?
そういえばわし、生命保険かけてたっけ?
そんな良からぬ考えが頭を去来しながら現地に到着すると、そこには一心不乱にカバン作りをする人たちがいた。
見たこともねぇオールドマシンを自在に操る70代のレジェンド
家庭用ミシンがおもちゃに見えるほど驚異的なスピードで縫い上げる工業用ミシン
絶対だれもレビューしてなさそうなガジェット
目に入るものすべてがいちいち新鮮なのである。
縫製業は地域雇用のエコシステムを担っている
また興味深かったのが、縫製業が山間地域の仕事を創出しているということであった。
最寄りのスーパー・コンビニまで車で15分~20分とか当たり前の世界であるため、車がない人は働きに出ること自体が難しい。しかし自宅にミシンさえあれば工場で縫いきれない仕事を請け負うことができる。部材の運送については縫製工場スタッフが車で配達してくれるから自ら行かなくても良いのだ。
現在コロナ渦で在宅ワークが浸透しているが、ずっと前から兵庫の山間部においてそれが実現されていたというのは非常に面白い発見であった。
縫製は息が長い仕事である
しばらく滞在していると70代以上の方々がみな元気に働かれていることに気づいた。一番たまげたのは、お風呂を薪で沸かして暮らしている81歳のおばあちゃんが納屋でミシンを元気に踏んでいる光景であった。もはやとなりのトトロの世界である。
そう考えると縫製という仕事は年を重ねても現役バリバリで働ける稀有な仕事ではないかと思うようになった。手を使う仕事は脳にいい感じの刺激を与えてくれるからであろう。
定年退職後やることもなくぼーっと過ごしているうちにボケて施設に入るみたいなパターンは世の中多くありそうだが、縫製業に関わっていればその問題は解決するのではないか。そんなことを考えた。
やはり1次情報は面白い
他にもカバンを取り巻く関係者は多い。例えば生地を切ることを専門にする裁断屋さんという業態が周囲に何軒もあるのだ。
普段私達が手にとって買うものが、どのような過程でつくられていくのか。考えを巡らせることはほとんどないし表に出てこない。しかしあえてその過程を1つ1つ覗き込んでみると、各人の想いやこだわりが垣間見れてなかなかにエモーショナルである。
自分にできる役割はなんだろう
現在のカバン業界は作る人と使う人の距離が遠い。なので単純に価格だけで判断されがちである。
特に私の家業が主軸とするスクールバッグ市場は価格の上限が決まっているためなかなかに厳しい。そしてカバンの構造に精通している営業は皆無なのが現状である。
分解すればわかるのだが、長持ちするカバンにはきちんと補強されていたり、いい生地がつかわれていたりと随所に工夫がもたらされている。
しかしながら値段が先に決まってしまうとそこにコストがかけられず、生地も妥協して予算内に収まる不本意な製品をつくるしかなくなるのだ。これでは作る方も使う方もお互い不幸である。
だから私がやりたいのは両者の距離をもっと縮めることだ。良い製品を作り、その根拠をきちんと説明し見合った対価を受け取る。そして使い手側のフィードバックを元にさらにいい製品づくりに邁進する世界だ。
現段階で覗き見た縫製業界は驚くほどネット活用がされていない。HPがない会社のほうが多数派であり、電話が基本的な連絡手段だ。成熟しきった産業であるゆえ、それでいけちゃうのである。 非常にアナログな世界であるが、裏を返せば伸びしろがあるともいえる。
水耕栽培・マイクロドローン。やりはじめた当時はネット上にほとんど情報がなかった分野を、いかに分かりやすく伝えられるか?長年試行錯誤してきた蓄積はきっと縫製業界のカバンの分野にも活かせるに違いない。
次回ミッション:兵庫ミッション後編
3/18から息子の卒園式出席やカバンの展示会にいくため一時期帰京中である。また3/25あたりから兵庫山間部に再突入予定だ。現地に入るとスマホをいじる暇もないほど忙しくなるので、行く前に現時点の考えをまとめておく。
今日の一句
伸びしろは サイバー空間 ない世界
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