どうも!冬が近づき、今年のベランダ・屋上水耕栽培も終焉に向かいつつあるカタオカ(@peterminced)です。
食分野に詳しい友人から、都市部の水耕栽培で28億円を調達したドイツのスタートアップ創業者が来るイベントが11/1(水)に開催される情報をキャッチ。
残念ながら私がこのイベントに気づいたとき一般参加枠の募集は終了していたのですが
コントリビューター(運営スタッフ)枠の募集が残っていたので試しにエントリーしたらなんとか入れました。
ちなみに一般参加枠は、定員30名に対し170名もの応募があったそうです。
水耕栽培ってニッチな部類だと思っていたのですが、関心持つ方多いんですね。
今回は運営側目線も交えながら私なりに感じたことをレポートいたします。
目次
会場は南青山のレクサスカフェ
今回びっくりしたのが、場所が表参道にあるレクサスが管理するカフェということ。水耕栽培がこんなオシャンティな空間で議論されるとは・・・。
下町在住のDIY水耕家である私としては、なかなかソワソワする場所です笑。
レクサスはトヨタ自動車が展開する高級ブランド。なのでトヨタ感満載なのかと思いきや、書棚にはスズキ自動車やホンダの創業者の本が並んでいてなんか懐の深さを感じました。
広島出身者なので、マツダもラインナップに加えて頂けると嬉しい。
どんな人が来場していたのか?
今回のイベント主催はレクサスさん主催なので、高級車を買いそうなナイスミドルなおじさまがばかりかなと思っていたのですが、20~40代の若い方が多かったです。
質疑応答の内容から具体的な参加者属性をピックアップすると
- シェフのコミュニティをつくろうとしているスタートアップの人
- 農家さんを支援しているクラウドファンディングの中の人
- 飲食に関するデザインディレクションをしている人
- アクアポニクス事業を始めようとしている人
- 昆虫食のベンチャー会社をやってる人
- 実際に農業を営んでいる人
- お酒会社のPR広報
共通項は、食に関わる仕事をされていて、情報感度が高いということ。
また英語堪能な方が多かったです。(フツーに英語で質問している人多杉)
ドイツで水耕栽培が展開された経緯
今回のイベントのメインコンテンツ
28億円を調達したスタートアップ「infarm」の創業者 オスナットさんの話を私の解釈を交えてお届けします。
創業においての問題意識
オスナットさんが持っていた問題意識は、長い食のサプライチェーンが引き起こす弊害でした。
長い物流に耐えるため、農薬や化学物質が大量に使われる上に
運搬の過程でエネルギーや鮮度のロスが発生してしまいます。
そこで生産地を生活拠点に限りなく近づければ解決すると考え、2013年アパートのリビングから水耕栽培をスタート。試行錯誤を重ねながら、コワーキングスペース・スーパーなど都市部各地にプラントを構築。
そして全プラントをクラウドでリモート管理する運用でスケールさせました。
スケールさせるまでのプロセスをオスナットさんは
「農業を中央集権型から分散型へ」
という言葉で表現していたのが印象的でした。
貨幣の世界では分散管理をするビットコインをはじめとした仮想通貨が話題となりましたが、農業においても分散化の波がはじまってるんですね。
背景にICT技術の発展があるということを考えると、農業に限らずあらゆる産業において分散化する流れが起こるような気がしました。
屋内水耕栽培のメリット
infarmはその名の通り、屋内で栽培します。そのメリットは3点
- 殺虫剤を一切使わない
- 気候の変動を受けない
- 昔の希少種も育てられる
今年猛暑過ぎて全然ゴーヤが採れなかった屋外水耕家の私としては、2のメリットは痛切に感じました。
作業者負担がデカすぎた・・・。
あと個人的に目からウロコだったのが 海外や昔の希少種も育てられるということ。
気象条件をコントロールできることでそれが実現できるというのは、新しい視点でした。
ベルリンではシソが大人気
気候の変動を受けないメリットを生かして、ベルリンのプラントでは日本の農作物も育てられているそうです。
特に水菜・シソ・わさびは和製ハーブとして人気らしく、シソだけでも何種類もあるんだとか。
2018年はシソが大豊作だったので、この話題は大変興味深かったです。シソは外国人にもウケるのか。
また、海外ノマドワーカーであるミヤザキ研究員から、海外駐在員の日本人がシソを食べたいけど入手できなくて悲しんでる話を聞いたことがあったのですが、屋内水耕で解決しちゃいそうですね◎
都市農業vs既存農家?盛り上がる参加者とのセッション
参加者は食に関わってる方が多いだけあって、質問タイムでは深いセッションが行われました。その一部を紹介。
良質なコミュニテイを作るポイントとは?
いっしょにワクワクできる関係をつくれればOK。
- 昔の希少品種を使う
- 運搬・冷蔵をしないので省エネルギー
という指針が共感してもらえている。
また、シェフは食材の品質をよく理解しているので、実際のモノを食べてもらえればすぐ分かる。
良質なコミュニティって損得勘定よりも、考え方に共感したりワクワクできることを起点としたほうがうまくいくんでしょうね。
ネット界では短期間で○○万円稼いだ・フォロワー何人増やした的な打ち出しで人を集める人も多いですが、中長期的に残るのはワクワク型なのかなって思いました。
スケールさせる時の最大の障壁は何だった?
数年間でプラントが100拠点以上とかなりスケール(大規模化)できているが、最大の障壁は何だったのか?
スケールさせるには多くのプレイヤー・利害関係者を巻き込む必要があった。
それぞれの人たちを説得することに苦労した。
- 品質の高さ
- スケールさせること
- 収益を上げるビジネスモデル
上記3点を粘り強く説明した。
私は個人のDIY水耕栽培家ですので、説得する相手はベランダ占有権を持つ妻1人で済みます。
しかし大規模に広めようとするとやはり利害関係者との折衝は必須。
まだ趣味レベルですが、もし事業として水耕栽培を推し進めるならばきちんと言語化しておかないといけないんだなと思いました。
既存の農家と競合しないのか?
都市部で農業できることはすばらしいことだが、地方ローカルの生産者と競合しないか?
例えば土地特有の固定種作物を都市部で育ててしまうと、日本の小さい農家が消えてしまうのではないかと思った。
私たちは既存の農家とは競合しないと考えている。
競合するのは輸入品のみ。
私たちが水耕栽培を都市部で進めることで、食への関心が更に高まりローカル農家は輝くと思う。
同じくパネルセッションに登壇されていたロフトワークス代表の林 千晶さんもコメント。
感情的に、日本の既存農家さんを想うことはそのとおりだと思う。
ただ私の感覚では地方の少量ローカル食物っておもったほど都市部に出ていない。
なぜなら何かを遠くに送るためには、一定のロット数・大量さが求められるから。
例えば種のライセンス料を取るとか、現地に行きたくなるような流れができれば両者WIN-WINになる。
今回のイベントで一番盛り上がったセッションでした。
実は私自身ある地域のゴーヤ農家さんを訪ねた際、
と言われたことがあります。
知らないうちに競合していたわけです。
ただ中長期的には、
”規格に合う作物を作って農協に納めればOK”という農家さんの意識を変えることに繋がりますし、
都市農業者も地方の生産地に関心を持つことになる(私がそうだった)ので、
農業界全体で見ると進歩につながると思います。
完全自動化 or エモーショナルな価値 ?
infarmの進める全自動オペレーションは効率・スケール化という面では素晴らしい。
だけど、私は古いタイプの人間なのか、生産者の顔が見えない冷たさみたいなものを感じる。
例えば教育現場にも展開するなどは考えられているのか?
私も食育はとても重要だと感じている。
直近では学校現場にもinfarmを導入し、子どもたちが作物の成長プロセスを知る機会を作れるよう準備中である。
私自身もアナログ派なので、質問した女性の考えには共感する部分がありました。
生産者のこだわりやストーリが見えるものは心惹かれるものがあります。
例えば
元ヤンの方が鉄分増えるかと思って小松菜にヘヴィメタ聴かせたら、効果はなかったけど大ウケして売れた
みたいな話はその代表例ですね。
農作物のエモーショナルな価値にも議論が及んだのが面白かったです。
(出典:ベジフルファーム通販ページ)
まとめ
2015年から手探りでベランダ水耕栽培をやってきたわけですが、自分がやってきたことが世界視点でどんなところに位置づけられるのか?色々俯瞰して考えるきっかけになりました。
水耕栽培って自分が思っていた以上に可能性のあることだし、無農薬の価値ってとても高いんですね。
ミニトマト農薬49回 炎上話は、裏を返すとそれだけ無農薬に関心の高い人が多いということなのかな。
ということは自分の目で作物を確認しながら育てられる水耕栽培は、個人宅でも需要があるんだと思う。— カタオカ⌘兼業水耕農家 (@peterminced) 2018年11月2日
あと水耕栽培って高い設備投資が必要と思っている人がけっこう多い気がしたので、その敷居を下げることが自分のミッションなのかな。
今日青山で行われた水耕栽培イベントに参加してみて、自分の役割とは狭いスペースでも安価で容易に作れる装置を研究する事で生産者を増やすことなのかなと思った。
大規模・効率化を追求すると、大きな投資が必要だし、エモーショナルな価値が薄れてしまう。
— カタオカ⌘兼業水耕農家 (@peterminced) 2018年11月1日
14:00から22:30までずっと立ちっぱなし・ひたすら裏方。なかなか過酷なコントリビューター枠でしたが、今後の水耕栽培の位置づけを考える良い機会でした。
最後パネリストとして登壇されたFabcafeを運営するロフトワークス 林千晶さんの言葉が強く頭に残ったので、お借りして本記事を締めたいと思います。
消費する時代は終わった。
何かを作る人はみなクリエイター。
それができる人は、未来を作れる。
今日の一句
”水耕は 未来をつくる 神ツール”
所属している会社でシェフのコミュニテイを作ろうとしている。
infarmには良好なシェフのつながりが構築できているが、どのように作っていったのか?