【業界歴30年】「解決!空き家問題」の著者、中川寛子さんにどうすれば空き家情報に巡り会えるのか聞いてきた。

近所で空き家を借りてみたい

これまで江田島空き家マッチングシステム(プロトタイプ)をつくったりと、空き家問題にかかわってきました。

けどいくら調べたり企画しても実践がなければただの机上の空論。なので最近は自ら空き家を借りて実践したい!という気持ちが強まってきたのですが、江田島だと如何せん物理的に遠く頻繁に足を運ぶことが難しい。

そこで近所に空き家はないものか?居住区である荒川区役所に行ったものの、空き家バンク自体がなくまだ体制が整っていない。

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街歩きしていていると結構な頻度で視界入ってくるのに・・・。一体どうやって空き家情報にアクセスすればいいのでしょう?

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プロによる空き家活用セミナーの告知

そんなことを考えていたら、「プロに学ぶ! 空き家問題の最新事情と活用の可能性」というイベントががタイムラインに流れてきたので、すかさず参加ボタンをPUSH!

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講師中川寛子氏の著書を読む

当日を迎えるにあたり、前提知識を揃えていたほうが良いということで講師:中川寛子さんの著書、「解決!空き家問題」を入手。空き家に関する書籍はこれまで何冊か読破してきたのですが、貼り付けた付箋の数が一番多くなるほど濃厚な内容でした。ポイントを順にご紹介しましょう。

登記簿をはじめとした制度問題

空き家の所有者が特定できないことが、空き家増加を加速させてことは様々なニュースで取り上げられていますが、根拠となる登記簿の更新には数十万円の費用がかかる上に、権利部分を明記する義務はないとのこと。

公的文書って必ず書かなきゃいけないものだと思っていたのですが意外。また、不動産登記費用ってなんでそんなに高いんでしょうね?もうちょっと安くなれば変わるのかなぁ。

このように登記簿のような制度面から建築基準法といった法令の課題までかなり深掘りされています。なんでも中川さんは不動産一筋30年以上なんだとか!圧倒的。

 

情報のマッチングが最大の課題

本書の中で頻繁に出ていたキーワードが「マッチング」。空き家は家主の感情が絡んでいるため、杓子定規な対策ではアプローチが難しいのです。なので中川さんは時間はかかるけど人間関係から構築していくのが最善のアプローチであると説きます。

ぼくも見ず知らずの人に対して、思い出の家を貸し出すことは抵抗があるという認識だったので腑に落ちました。

 

活用事例は宮城から鹿児島まで

本著では空き家の活用事例がかなり幅広く紹介されています。

  • 都市部~地方
  • 1戸建て~集合住宅
  • 収益実現~公共性重視

とバリエーションが豊か。

事例地域も北は宮城県から南は鹿児島まで超広範囲。中川さんの情報ネットワークの広さにビビりました。

 

解決には愛情と連携が重要

中川さんは空き家活用にあたっては2つの言葉がキーワードと説きます。

それは「愛情」「連携」。取り上げられていた事例の当事者は、みな空き家に対する優しい眼差しを持ち合わせていました。

利己的に儲けてやろうというオラオラ精神は空き家業界とはうまくマッチしないのかもしれません。

 

空き家活用セミナー参加の感想

そんなわけで予習バッチリ状態で臨んだ空き家活用セミナー当日の感想を書き記します。

興味深い参加者の属性

中川さんのお話もさることながら、参加者の方の属性や意見が面白かったです。一例を挙げると

  • ファイナンシャルプランナーの男性・・・お客様から実家の空き家をどうしようかという相談が多くなっている。
  • 関西の実家に空き家予備軍を持つ都内在住の女性・・・自分で色々DIYしてみたい。訪日外国人向けのゲストハウスは周辺住民にとって抵抗感があるかも。
  • 介護職の女性・・・自分が一生懸命キレイにしてきた独居老人の自宅が空き家になってしまうのを見るとなんともやるせない。

空き家に関する当事者の話って普段耳にすることがなかったので、非常に興味深く聴かせて頂きました。

 

マインド面の障壁が非常に大きい

中川さんいわく、人の気持や感情に関わることは、政策に落としにくい と。

やはり空き家解決はトップダウンよりもボトムアップ型のアプローチが重要になってくると確信しました。

 

相談できるチャネルが限られているのがもったいない

空き家が発生した際に相談できる窓口は不動産屋or住んでる地域の自治体に限られていました。その結果下される回答は、建て替えや取り壊し。

他の人の目線が入れば、活用アイディアは無限に広がっていくのに・・・。

 

実は実家(広島県広島市)の近くに50年以上も営業していた味のある地元密着型のレストランがあったのですが、消防法の関係で今年の3月にあっけなく解体。どこにでもあるコンビニになってしまったことが、今でも心の中に強烈なモヤモヤとして残っています。

もっと調べ尽くしていたら、何か方策があったんじゃないかと。

空き家は意外と活用できない

全国の空き家活用現場に足を運ばれている中川さんによると、空き家が100件あるとしたら実際に使えるのは10件くらい。

  • 現行の法令に適合しない
  • 修繕費用に対する効果が薄い

が壁になっているようです。なかなか厳しい・・・。

 

空き家情報にアクセスするためには地道な積み重ねしかない

全国の事例を見られている中川さんなら画期的&スムーズに空き家を借りる方法をご存知なのかと聞いてみたのですが、やはり地道に突撃していくのが一番有効な方法だとのこと。

具体的には空き家となっている家に手紙をポスティングしたり、登記簿を照会したり。

 

もうこれはやるしかないってことですね。

 

ぶっちゃげ話がたくさん出た懇親会

セミナー後に懇親会があったのですが、そこで出た話もなかなかエッジが聞いてました(笑)

  • 全国規模の大手ハウスメーカーがある国は日本くらい。ヨーロッパの家は数十年で壊れたりしない。
  • タワーマンションはヤヴァイ。今はいいけど50-60年後のことなんて誰も考えていない。
  • 数十年経って家の価値がゼロになるのは日本と韓国くらい。
  • マンションが建て替えられた事例って全国でたった200件しかない。

 

 

まとめ

江田島の空き家に関わってきたり各種書籍を読んでなんとなーく見えてきた課題が、不動産業界歴30年以上&全国の事例を取材されてきた中川さんの話を聞いてよりクリアになりました。

 

ぼくの中での現在の結論としては下記の通り。

  • ボトムアップからのアプローチが重要
  • 政策で一気に解決する問題ではない
  • 空き家特有の個性に面白さを見いだせる人が求められる。⇒愛情
  • 不動産業界以外の知見が入ると活用用途が一気に広がる⇒連携
  • 空き家を借りるためには泥臭く行くしかない

 

また、今回のセミナーは慶應義塾の文明塾という団体がスポンサーになって頂いたことで開催費・懇親会ともリーズナブルにできたとのこと。この場を借りてお礼申し上げます。

 

今日の一句

”感情は 政策だけじゃ ほどけない”

 

 

【補足】

中川さんが空き家を語られている基本視点、多くの人が共感するのではないかと思い一文をご紹介します。

「古いモノを上手に使うという、かつてあった、でも、最近まで忘れられていたやり方が再生できれば、日本の未来は決して暗くはない。」

 

 

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