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ブロガー・アフィリエイターの生活基盤を支えるASP
この10年間、ブロガーやアフィリエイターなど個人で活躍される方が増えてきました。彼らの活動基盤を支えるプラットフォームとして欠かせない存在がASP(Affiliate Service Provider)。
私もブロガーの端くれとして、現在のアフィリエイト業界がどのようになっているのか気になります。
そこで、3/28(水)に開かれた「業界最大のASPプラットフォーム A8」を運営するファンコミュニケーションズの株主総会に行ってきました。
(出典:A8メディア向けページ)
意外とウェイウェイしてない会場雰囲気
ブロガーやアフィリエイターって「月100万円突破ヤホー!」みたいな雰囲気があるので、そこを支えるASPの株主総会もさぞウェイウェイしてるのかなと思いきや・・・
意外と静かでした笑。
- 会場:青山学院大学横のアイビーホール。
- 出席者数:30名弱
- 男女比⇒ 9:1
若い方もいるものの、年配者が多い。おじいちゃんも何名かいたけど業務内容理解してるのだろうか・・・・?
第2の踊り場を迎えている業績
まずはじめに、ファンコミュニケーションズの業績を振り返ってみましょう。
2006年にIT業界を揺るがしたライブドアショックの影響もあり、いったん業績は足踏み。
その後2011年以降ものすごい勢いであっという間に300億円企業に成長しました。
しかし最近は成長にも陰りが見え始め、第二の踊り場を迎えています。
(出典:ファンコミュニケーションズIRページ)
つまりASP業界は今過渡期を迎えているわけですね。
また、グラフにして振り返ってみると2008年リーマンショック以降の景気後退期に成長が加速しているのが大変興味深いです。
2020年以降景気が後退すると予測されていますが、ファンコミュニケーションズの過去の業績推移と照らし合わせるとASP業界でも何か大きな変化が起こるかもしれませんね。
業績の停滞要因とは何か?
今期の売上予想は前年比-1.5%の385億円。
経常利益に至っては-13.3%の50億円と、幸先はあまりよくありません。なぜでしょうか?
柳澤安慶社長の話を3点にまとめてみました。
①iOSの仕様変更によるトラッキングアルゴリズムの変更
現在のWEBアクセスの大半を占めるのがスマホ。そのスマホの6割を占めているのがiPhoneです。
しかしiPhoneのOSアップデートにより、成果報酬の根拠となるトラッキング情報が取得できなくなってしまいました。
成果が計測できないとなると、広告を掲載しているメディア側はもちろん、ASPプラットフォームであるファンコミュニケーションズの売上も減少します。
そのためファンコミュニケーションズは、新しいiPhoneのOSにも対応できるようプログラムの開発を進めており、
3月末時点で
- 案件の4割
- 売上の6割
が新OSに対応しているようです。
ただ、新OS対応のための開発費が収益を圧迫することになります。
②ネット広告への不信感増大
ネット広告は出始めたころは目新しく、成果も出やすかったのですが、時を経てだんだん飽きられてきました。
またフェイクニュースやウソ情報の広告も出回るようになり、ネット広告自体の信用が低下。
ユーザー側も鬱陶しく感じるようになり、アドブロック(広告非表示)機能を有したスマホ端末も出始めてます。
結果、ネット広告自体の成果が以前よりも出にくくなり、企業側も出稿を渋るようになりました。
③動画広告・SNSに広告予算が集中している
Youtuberやインスタグラマーが注目されているように、広告予算が動画やSNSに偏り始めているようです。
その分従来のWEB媒体に投下される予算は減少してしまいました。
広告主・メディアの登録数は増えている
厳しい外部環境下に置かれているファンコミュニケーションズですが、広告主やメディア(サイト)数は堅調に増加しています。ネット広告業界におけるインフラの役割は高まっているようです。
Seesaaブログの運営会社を買収している
業績報告書を読んでいて興味深かったのが、2017年にシーサー株式会社を買収し完全子会社化していること。あのSeesaaブログの運営会社です。
無料ブログサービスではそこそこの知名度を誇るため、今後の展開が期待されます。
潤沢な現預金(168億円)を有している
今期はマイナス成長が予測されるファンコミュニケーションズですが、財務状況は極めて良好です。
BSを見ると、現金預金がなんと168億円!
自己資本比率も74.7%(H29年期末)と抜群の安定感。
負債の内訳も買掛金や引当金であり、借入がナッシング!つまり無借金経営。すごい。
この自由に使える168億円をこれから何に使うんでしょうか??
シーサーを買収してる過去の文脈から考えると、どこかのSNSや動画広告プラットフォームを狙っていてもおかしくなさそうです。
柳澤社長に質問してみた
気になることがあったので株主総会や経営説明会を通じて2点質問させて頂きました。
従業員の平均勤続年数がバリューコマースよりも低い
お付き合いのあるアフィリエイターのお客様からよく、「A8の若い営業の方はすぐに辞める。数多くのメディアをまわらなきゃいけないから超忙しいらしい。」
という話を聞いていたので、同業他社であるバリューコマースの数値と比較しながら質問してみました。
弊社も高齢化が進んでいるため、変化に対応するため若いデジタルネイティブ世代の力を取り込みたいと考えている。
そこで3年前から新卒採用を積極的に行い、今年(4月入社)は30名を採用した。
その結果、平均勤続年数や平均年齢が若くなっている。
平均勤続年の多い少ないについては議論の余地があるが、労働時間を含めて働きやすい環境を作っていきたい。
働きやすさについて、定着率のデータはありませんでしたが、参考までに従業員の推移グラフを添付しております。
売上規模と連動して伸びていることが分かります。
広告主の審査基準はあるのか?
私自身、ホワイトニング歯磨き粉の効果を徹底検証するサイトを運営しているのですが、正直高額で成果報酬も高いにもかかわらず効果が感じられない銘柄もありました。
そこで広告主に対するチェック機能ってどの程度働いているのか気になったので質問してみました。
A8で扱っている案件の中でも効果が疑わしいものも正直ある。
わが社には広告内容をチェックする機能はあるのか?
法令に照らし合わせて問題がないかチェックしている。
これは広告主だけはなく、メディアに対しても行っている。
ちなみに広告主が知名度が高い・大手企業だからといって無闇に認可しているわけではない。
逆に企業規模が小さいからといって断っているわけでもない。内容で審査している。
審査は行ってますが、商品の中身・効果までは踏み込んでいないようですね。広告主も約3,500もあるので、1つ1つレビューし厳選するのは難しいのでしょう。
となるとユーザー(消費者)にとって有用な広告となりうるかどうかは、私たちブロガーやアフィリエイターの腕・モラルにかかっているということです。
今後の戦略⇒創業の原点に戻る
ちょっとジリ貧感があるファンコミュニケーションズですが、今期の基本戦略は
「創業の原点に戻り顧客の事を徹底的に考える」こと。(顧客=広告主・メディア)
紙媒体広告が主流だった約20年前は、広告はお金持ちしか打つことができなかった。
ネットの成果報酬型広告であれば小規模事業者の方も広告を打つことができるのではないか?それがファンコミュニケーションズの原点。
売上・規模・利益を追求しすぎると見失いがちになるが、今期はその原点に立ち戻って事業を進めたい。
というのが柳澤社長のコメントでした。
ネット広告は社会インフラである
個人的に面白かったのが、柳澤社長の語るネット広告の意義。具体的には下記の通り。
ネット広告はあらゆる無料サービスを支えている
チャットワークとかそうだよなぁ・・・。
アフィリエイト広告は個人をエンパワーメントしている
ブロガーをはじめとしたフリーランスが活躍できるのってネット広告のおかげなんだよなぁ。
消費者は企業の公式情報ではなく利用体験を求めている。ASPはその潤滑油。
ASPが介在しないと高品質なレビュー記事ってなかなか生まれにくいかも・・・
普段当たり前のように接しているネット広告ですが、18年間も業界に身を置かれている柳澤社長の視点が大変勉強になりました。
まとめ
ブロガーの端くれとして参加したファンコミュニケーションズの株主総会。
ASPは正直収益源の1つとしてしか見えていなかったのですが、
このインフラを成長させるのか縮小させるのかは、私たちブロガーやアフィリエイターのモラル・倫理観にかかっているんだなと認識。
- 使ってもいない商品を無闇にオススメする
- 過度に画像加工を施して効果を偽装する
- 消費者目線を失い、報酬単価の高さだけでランキングをつくる
といった行為は瞬間的には収益が上がるかもしれません。
しかし中長期的にはネット広告の信用を低下させ、最終的に私たちメディア全体の収益を圧迫します。
ネット広告は大事な社会インフラなのだという矜持をもってブログを運営したいと思った株主総会でした。
今日の一句
”輝ける 個人を支える ASP”
わが社は同業他社のバリューコマースと比較して平均勤続年数が短い。
広告の成果を出すためにはメディアとの中長期的な付き合いが大事である。
この数値をどのように考えられているか?