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ライフワークになってる株主総会
4/27は丸善CHIホールディングスの株主総会でした。これで人生26回目の株主総会。昨年のユーグレナ以来久々で胸が踊ります。
株主総会の何が面白いんですか?とたまに聞かれるんですが、なんていうんだろう、AKBの追っかけをやってるような感じかもしれない。会いにいける経営者みたいな。
あと実際に足を運ぶことで、今まで知らなかった企業の裏側が分かるという知的好奇心。お金をめぐる株主たちの人間ドラマ。
そう、株主総会って最高の知的エンターテイメントだと思います。
丸善CHIを買った理由
今回丸善CHIを買った理由は下記のとおりです。
①3万ちょいで買える。
丸善の株を買うために必要な最低資金は35,200円(2017年5月9日現在)とわりと手頃に買えます。極論、株主総会に行くことだけを目的とするならば、権利確定日の数日持ってすぐに売ってしまえば値下がりによる大きなダメージを受けずに総会に行けちゃいます。
②リアル書店の今を知りたかった
現在Kindleをはじめとした電子書籍市場が急拡大していく中で、既存のリアル書店はどのような対応をとっていくのか興味がありました。
ぼく自身Kindleでかなり本を買う方なのですが、技術書やある特定ジャンルの本を探したいときは、実際本屋に足を運んで何冊か見比べた上で購入します。全国的に書店の数は減っているのですが、リアルにはリアルの良さがあると思うんですよね。
ちなみに丸善CHIホールディングスはMARUZENだけでなく、ジュンク堂も傘下に入れています。名古屋に住んでいたときはジュンク堂を愛用してたなあ。あそこにいくと不思議と長居をして気がつくと複数冊は買ってました。
会場はベルサール九段
株主総会の場所はベルサール九段。九段下って普段は全く行かない場所です。よーく考えると変な名前ですよね。9段下って。階段でもあったのかいな。
あと最近良くベルサールて聴くなぁ。何かセミナーだったりイベントがあるときはたいてい「ベルサール○○」な気がする。
売上は堅調に増加している!
まず事業報告なのですが、どんどん本屋が閉店している中業績も厳しいのかなと思っていたら、予想に反して伸びてました!意外!しかも1,780億円と結構な額です。
多種多様な事業セグメント
じゃあなんで伸びてるんだろうと売上の内訳である事業セグメントを見てみると、5つもの事業領域が!
事業セグメント | 売上高(百万円) | 営業利益(百万円) | 営業利益率 |
---|---|---|---|
文教市場販売 | 61,055 | 2,994 | 4.9% |
店舗ネット販売 | 76,382 | -978 | -1.3% |
図書館サポート | 22,801 | 1,935 | 8.5% |
出版事業 | 4,467 | 160 | 3.6% |
その他事業 | 13,698 | 518 | 3.8% |
当初イメージしていた本屋としての事業は、全体売上の43%と約半数を占めていますが、営業利益は残念ながら約10億円の赤字。
しかし文教市場販売・図書館サポート事業をはじめとした他事業が見事にカバー。
特に図書館サポート事業なんて営業利益率ダントツですからね。てか本屋以外の事業って一体なにやってんの??
文教市場販売事業
この事業は学校や公共施設の図書館向けに書籍を販売しているようですね。新設時は一気にまとまった数を納入できる上に、定期的な購入も見込めるので、うまく顧客を囲い込めればオイシイ市場ですな。おもろい。
図書館サポート事業
図書館の運営管理自体をまるっとやるのが図書館サポート事業。なるほど、本そのものだけでなく本を管理するソリューションを売ってるんですね。これはぼくにとっては新鮮に写りました。てか管理してる図書館数超多い!1,206館!
その他事業
丸善の本当の面白さは、その他事業にあります。具体的には小売店内装業・Apple製品の修理・保育園・・・etc。
それもそのはず、重要な子会社一覧を見るとすんげー並んでます。
個別に面白そうなやつをピックアップすると
書棚を作る会社 第一鋼鉄工業所
保育園 明日香
まさか製造業から保育園まで統括していたなんて・・・意外すぎだろ!
ちなみにシャチョーさんいわく、明日香は横浜の待機児童0に貢献した企業として、一時期マスコミなどで特集されたそうです。
面白すぎる大株主構成
株主総会で思わず唸ったのが丸善CHIホールディングスの大株主の構成。
株主名 | 持株比率 |
---|---|
大日本印刷 | 52.97% |
工藤恭孝 | 7.67% |
講談社 | 4.35% |
トーハン | 3.99% |
宝生堂 | 3.48% |
小学館 | 2.38% |
石井昭 | 2.18% |
従業員持株会 | 2.14% |
新田久子 | 1.26% |
図書館振興財団 | 0.99% |
(2017年1月末時点)
印刷業大手の大日本印刷が過半数の株を握ってるんですね~。紙が関連する事業を川上から川下まですべてコントロール下に置く大日本印刷の戦略に思わず唸ってしまいました。
あと個人株主がTOP10の中に3名いるのが面白いですね。
工藤恭孝さんは傘下のジュンク堂創業者。
石井昭さんは同じく傘下の図書館流通センター創業者。
新田久子さんは多分お金持ちのおばちゃま(笑)
オールドタイプな取締役陣
今回選任される取締役の方々のプロフィールを眺めてみたところ、興味深い事実が。
役職 | 氏名 | 出身 | 生年 |
---|---|---|---|
代表取締役 | 中川清貴 | 大日本印刷 | 昭和30年 |
取締役 | 松尾英介 | 大日本印刷 | 昭和28年 |
取締役 | 石井昭 | 図書館流通センター | 昭和36年 |
取締役 | 工藤泰孝 | ジュンク堂 | 昭和25年 |
取締役 | 杉本尚彦 | 大日本印刷 | 昭和32年 |
取締役 | 藤本博文 | 大日本印刷 | 昭和32年 |
取締役 | 五味英隆 | 大日本印刷 | 昭和35年 |
なんとほとんどが大日本印刷出身者で占めてるんですね。
さらに昭和40年代以降の人が全くいない。今まで40代の方が取締役を連ねている総会がフツーだったので、ちょっと意外でした。
今後の展望
中川社長が事業報告で言ってたことをざっくりまとめると
つまりコンテンツが客寄せとして使われている。
書籍の持つコンテンツの力を見直し、リアルならではの強みを発揮していく。
ということでした。ぼくもコンテンツを作る者の端くれとして、中川社長の言葉には刺さるものがありました。上位表示させてPV集めるために、引用ばっかりのまとめ記事20選を量産するってどうなのよって思いますもん。
とあるオウンドメディアの担当者が、はてぶ500ついた渾身の記事ですわ!って言ってたので中身見たら、ただ良さげなブログを20個選んで簡単に紹介しただけのまとめ記事だった。コンテンツってそんなもんなのかね。悲しいぜ。
— ミンチ研究員 byベランダゴーヤ研究所 (@peterminced) 2017年5月4日
株主からの質疑応答
では恒例の株主からの質疑応答コーナーです。主要なものだけピックアップしております。
また、回答は取締役の方が都度交代でされていましたが、本記事では簡略化のため中川社長が回答した体裁に統一しております。
意味不明な質問
(何言ってるかさっぱり不明 延々と話す)
株主総会に何度も足を運んでいるとけっこうな頻度でワケワカンないおっさん・オジイサンが出てくるんですよ。この方は最前列でなにかまくしたてられていました。
株主総会って結構その人の質問力が試される場なんですよ。こういったやり取りをハナから聞いてるとすげぇストレスですし、自分も質問するときに気をつけようと意識するようになります。
いろんな株主総会で質問しまくってるからか、ちょっと質問しずらい場面でもフツーに質問できる力が身についてしまった。株主総会はいいトレーニングじゃな。
— ミンチ研究員 byベランダゴーヤ研究所 (@peterminced) 2016年11月29日
財務諸表に記載の仕掛品について
へー古書や古文書って仕掛品になるんですね。詳しくはよく聞き取れなかったんですが、古書や古文書を扱うなんてさすが老舗の丸善だなと思いました。
コスト圧縮の具体策は?
また物流に関しても、親会社大日本印刷の物流コンサル部隊の力を借りることで大きくコスト削減をすることができました。
メスが入りにくい公共図書館の運営を民間視点で効率化させていくサービスは面白いですね。
また親会社のリソースを使えるというのは丸善の大きな強みだなと思いました。
丸善の社章はもうつけないのか?
ちなみに丸善CHIの「CHI」は、「知」を表しています。
ぼくも今回の総会に足を運んで驚いたのが子会社の多さ。各事業をうまく管理していくにあたって、丸善マークで上から目線で行くのではなく、肩を合わせてシナジーを生み出していこうという経営陣の配慮を感じました。
CHI=知 とはわからなかった・・・。てっきり何かの略称なのかと思ってました。
配当どうにかしてよ
実現できるよう努力いたします。
毎回必ずと言っていいほど出てくる配当クレクレ質問。ぼくはどちらかと言うと企業成長によるキャピタルゲイン(株価の値上がり益)を重視する派なので、特段関心はないのですが、丸善のような老舗で成熟した企業ですと、やはり配当を期待するんでしょうね。
カレーは缶詰かレトルト、どっちかに絞ったほうがいい
どちらかに絞った方がいいのでは??
今回の株主総会のお土産にはレトルトタイプのものをご用意しています。缶詰だと重いかなと思いましたので。
また、パッケージは大日本印刷のノウハウを余すことなく使ったことでかなりいい出来のものが出来上がりました。
突然出てきたカレーの話に大量の「???」がつきました(笑)
えっ丸善ってカレー屋さんなの??
その謎は後ほど明らかになります。
ミンチ研究員も質問してみた
ぼくも聞いてみたいことがあったので質問してみました。
経営陣は年齢・出身に偏りがないか?
異業種とのコラボレーションを進める上で多様な人材を経営陣に加えてみても良いのではないでしょうか??
また大日本印刷出身者が多い点につきましても川上川下と密接に協調していく方が良いと考えます。
中川社長の回答も一理あるなと思いました。実際大日本印刷と協調することで、物流コスト削減やカレーの高クオリティなパッケージを実現できているわけですからね。
ただ、若い方の登用については、電子書籍市場を意識する上で検討の余地はある気がします。
経営陣に女性を加えてみてはどうか
あとぼくの質問にかぶせて、若い女性の方が質問されていたので補足します。
また、書店のスタッフは実はほとんどが女性であり、男性は圧されているのが丸善なのです。
鋭い質問。けどうまくカワしたなーって思いました(笑)
従業員に女性が多いことと、持ち株会社に女性がいないことは別問題です。個人的には女性1人くらい丸善CHIホールディングスの経営陣に加えてもいいのかなと思いました。
中川社長の質問捌きがすごかった
総会中はかなりの質問が出てきたのですが、それを次々と効率的に捌く中川社長が個人的に良かったです。テキパキ話されていてリーダーシップを感じました。なので総会は1.5時間で終了。
もし話の長いユーグレナの出雲社長だったら、2倍以上はかかってたでしょう(笑)
経営陣の面々はやや偏りがあるように感じましたが、中川社長がいる限りはひとまず大丈夫だと思います。
丸善創業者はハヤシライスの創始者だった!
総会終了後、お土産を頂いたのですが、中身をあけてびっくらこきました!
一見分厚い本かと思いきや
中身はレトルトのカレー&ハヤシライスのルー!
総会中の質問でも疑問でしたが、なんで本屋さんがカレーをつくって売ってるのよ!?と思いながらよく読んでみると・・・
丸善創業者の早矢仕さんがハヤシライスの生みの親ですってー!!??(諸説あるらしい)
まとめ
リアル書店の運営だけしてるのかなと思って足を運んだ丸善の株主総会でしたが、実際は本屋以外の事業が稼いでいる異業種混合体でした。
特にカレー屋さんだったということが本総会で一番目からウロコ(笑)こういうイレギュラーな発見に出会えるのが株主総会の魅力ですね。
読者の方も是非株主総会に参加されることをオススメします。
今日の一句
”保育から カレーも扱う 本屋さん”
今月の株主総会へ行こうかどうしようか迷って調べて、こちらのブログにたどり着きました。とても細かく紹介されていて通知に記載された手書きのメモも率直で最後まで面白く拝見致しました。ネットでチェックすれば良いかと思っていたのですが、中川社長の質疑応答の対応は実際に見に行きたくなりました。
今後も気になる総会があれば是非チェックしたいです!
コメントありがとうございます!是非足を運んでカレーを食してみてください笑。
私が実際に足を運んで印象的だったものは、当ブログの株主総会カテゴリにUPしていますので、ご高覧頂ければ!
またmaruさんの方でも面白い総会に巡り合いましたら、共有頂ければと思います◎
私も26日の総会行こうと思います。
大変わかりやすい記事で参考になりました。
ありがとうございます。
総会の質問ですが、会社のOBの現役役員の揚げ足取りみたいな、
訳のわからない長い質問減らす方法ないんですかね?
株主にNGボード配っておいて、質問がくだらないと思ったら、
ボード上げて、半分超えたら質問受けなくて良いとか。)^o^(
お役に立てて良かったです!
株主同士が質問の出来を可視化できるシステムあるとたしかに面白いですよね!
現状「なげーぞー! ひっこめー!」と野次とばすしかできませんから笑