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都市部の教育格差はどのような状況なのか?
今回は「脱・教育環境格差。 “公営塾”と”地方高校”の取組み」 前編の続きです。
登壇者は都市部の教育貧困層に教育支援を行う、NPO法人キッズドア 渡辺さん。
教育格差問題の中で一番つまづきやすい時期が 中学~高校時代。
都市部の子どもはほとんどが塾に通っており、そこから外れると受験情報が入ってこず、対策が取れないままドロップアウト。
特に高校時代においては、アルバイトに忙殺され、負のスパイラルに陥ることが多いそうです。
例えば高校入学時に優秀だった子が、アルバイトに時間を取られ勉強時間が確保できなくなった結果、夏休み頃には落ちこぼれてしまうケースも。
地頭はいいのにモッタイナイ・・・。
また、ICTの技術発達で、スタディサプリなど低コストで学べる仕組みが整っているが、貧困家庭だと、そもそも家にパソコンがない場合があるそうです。
なのでインターネットで願書を求める際、NPOの事務所に来てPCを借りる子どもが少なくないんだとか。
マジカ!
ぼくは小さい頃から家にパソコンがあり、それが当たり前だと思っていたのですが、情報に接する入り口すら持ってない人がいるということに衝撃を受けました。
そうなると教育補助制度とか、全国募集している地方高校の情報が、いくらインターネット上で発信されたとしても、そういった人たちには届かないわけです。
ぼくはネットで情報が発信されれば、いずれ検索エンジンを通して求める人に情報が届くと考えていたのですが、その認識は改めないといけないなと思いました。
そもそも届かない。
そんなアルバイト忙殺スパイラルに困っている高校生に対し、渡辺さんは大崎海星高校のような地方高校への留学がマッチングすると提唱しています。
公立なので学費が安く、少人数制のきめ細かい指導が受けられる上に環境も良い。
たしかに見事にマッチングしています。
都内私立高校の初年度納付金が高すぎ
てか東京都私立高校の初年度納付金が 89万円 +α ってエグいんですけど・・・。
ちょっと高すぎやしねぇか・・・。この問題って、ぼくら子育て世代の働き方に影響をおよぼす話なんじゃないかと思いました。
高い教育費を払うために、嫌な仕事でも無理して耐え忍ばなければいけないわけですから
ビクビク・・・
また、前編で紹介した大崎海星高校の場合
- 月額寮費 3万円
- 授業料 0円 (基準所得以下で無償化の対象になったと想定)
東京都私立高校1年分の学費 89万円があれば
89万 ÷ 3万 ≒ 30ヶ月
地方留学3年間分の費用がほぼまかなえる わけです。
課題は物理的な距離の遠さ
都市教育貧困層 と 生徒数減に悩む過疎地高校。
すごい良いマッチングだと思うのですが、一方でリスクも。
第一は子離れの難しさ。
貧困家庭は1人親が多いので、子どもと離れてしまうのはやはり寂しさが募りますよね。
その子のために気張ってきた親御さんのことを考えると分かる気がします。
第二は交通費負担。
例えば興味のある地方の高校があるとして下見をしてみたいと思った時、
都市部から地方に行くには多額の交通費が発生します。
そして入学が決定し定期的に帰省する場合にも多額の交通費が。
ぼくも東京から広島に帰省する際は 往復3万円以上 新幹線代で吹き飛んじゃいますからね・・・。
毎回ヒイヒイ言ってます。
以上を勘案すると、過疎地の生徒減に悩む地域は、旗を立ててひたすら 生徒が来るのを待ち続ける のではなく
積極的に都市部に売り込みに行ったほうが良いと思いました。
都市部に売り込みといっても、1日だけの合同説明会に参加するのではなく
キッズドアさんのような教育支援を行っているNPOに直接働きかけたほうがいいでしょう。
実際大崎海星高校もキッズドアさんに何度も足を運ばれているそうです。
また下見や帰省に関しては自治体からの費用補助。
そして親離れ子離れの寂しさ解消にはSkypeなど無料TV通話サービス環境の整備
といったフォローがあると、より来てくれる可能性が高まると思いました。
久米島の公営塾の現場より
当初プログラムにはなかったのですが、急遽久米島の公営塾 塾長 山本あゆみ さんからskypeによる現場報告です。
前編でもあったように、沖縄県の貧困率は 37% と群を抜いていますが、現地でもそれを実感しているとのこと。
列挙すると・・・
- 勉強しない人が多すぎて、同じ時代を生きているとは思えなかった
- 学校に行って机に座るのが勉強だと思っている
- 本屋がないのでテキストが買えない
- 兄弟が多くうるさくて勉強できる場所がない。
- 勉強をしていると学校の先生が驚く
なかなか衝撃的です・・・。
そんな状況下で山本さんは約2年前から公営塾に入り、スタディサプリを活用しつつ
琉球大学に3名の合格者を出し、230人の生徒中60人が公営塾に通うようになるほど改善を進めていきました。
山本さんは、勉強をできる環境がそもそも存在していなかった。だから環境と整えることが大事。
といいます。
都市部って 早朝から営業しているカフェや図書館の数も多く、大型書店もあるし
なにかを学ぶ環境としては恵まれているんだろうなと、聞いていて気付かされました。
地方の田舎には落ち着いて過ごせるスターバックスみたいなカフェなんて皆無ですからね・・・。
教育環境格差とICT教育の可能性について
勉強においては環境が重要であるという話でしたが、環境の不利を解消する手段として注目されるのがテクノロジー。
登壇者はリクルート次世代教育研究院 小宮山さん
今までの発表にもちょくちょく出ていた スタディサプリ というオンライン教育サービス。
大きなポイントは 低コスト & 場所の制約を受けないということ。
スタディサプリは 月額980円 。塾に月数万つぎ込むことを考えると格安です。
小宮山さんはICT教育の最先端を行く、エストニアの様子も報告。
エストニアって正直どこにあるのかわかっていないのですが、マイナンバー や skype 発祥の地だそうです。
skypeはマイクロソフトに買収されましたが、元々はここが発祥なんですね。
遠距離でも無料で孫とTV電話できるのはエストニアのおかげなんですな。
そんなIT最先端のエストニアで、国のIT予算の使い方を一手に任されているTaavi 氏(読めん!)は
ITはあくまでもツール(手段)であり、何をうみだすかが重要 といいます。
その言葉を反映してか、同国でのITの授業は、五感が 9割、テクノロジーは残り 1割 だそうです。
2020年にはプログラミングの授業が必修化されるとニュースになっていますが
言語そのものを教えるのではなく、ITを使って何を実現したいかが大事になってくるんでしょうね。
ぼくも現在プログラミングを学んでいますが、どんな言語が扱えるかよりも、どんなサービスを実現したいか。
そこをブレないようにしなきゃなと身につまされながら聞いてました。
教育関係のイベントは熱量がすごい
プログラム終了後も会場内では各所で熱い議論が。
今回のフォーラムは登壇者だけじゃなく参加者も含めてよくしゃべる人が多かった。
みんながみんなマシンガントーク過ぎて、倍速再生の映像授業を聞いているようでした。
まとめ
ボリュームがすごすぎてあまりまとまっていないんですが、
過疎地の生徒減に悩む学校・地域は、都市部よりもローコストで恵まれた環境を武器に
都市部の進学意欲のある貧困家庭に、交通費等のフォローをからめて積極的に働きかけていけば、
まるっと解決しちゃうんじゃないかと思った
面白いフォーラムでした。
今日の一句
”教育者 トークがみんな 2倍速”
▼ユニクロに1年間潜入した気鋭のジャーナリスト、横田増生氏が描く受験戦争の裏側
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